こんにちは、トレタ VPoEの北川です。
最近、エンジニアのキャリア形成について考える機会が増えています。特に目標設定の場では、メンバーが今後どのようなキャリアを歩みたいのかという話題をよくしています。今回は、その考察をブログとしてまとめました。
トレタにおけるエンジニアのキャリアパスは、大きく分けて マネージャー と スペシャリスト の2つがあります。
- マネージャー は、チームリーダーの上位に位置し、複数のチームをリードしながら組織の生産性を向上させます。
- スペシャリスト は、マネジメントには進まず、技術を追求し、特定分野の深い知見を持つことでプロジェクトに貢献します。
先日、チーム内で議論した結果、エンジニアのキャリアタイプは 3つのパターン に分類できると考えました。
エンジニアの3つのキャリアタイプ
1. リーダー
- マネジメントに特化し、チームをまとめながら組織の生産性を向上させる。
- コーディング業務は減り、チーム全体の成果を最大化することに注力する。
2. オールラウンダー
- フルスタックエンジニアに近く、フロントエンド、バックエンド、インフラまで幅広く対応できる。
- ビジネス側のメンバーとのコミュニケーションや要件定義など、エンジニアリング以外の領域にも関与する。
- 1人で技術面の多くを担うことができ、小規模チームでは特に活躍しやすい。
3. スペシャリスト
- 特定の技術分野に深く特化し、複数のプロジェクトに関与する。
- その存在が技術面の課題解決をスムーズにし、チームの「守護神」となる。
タイプごとの伸ばし方
各タイプに沿って、伸ばし方も異なります。
- リーダー:より多くのメンバーやチームをマネジメントし、マネージャーとしてのスキルを磨く。
- オールラウンダー:フルスタックとして足りない技術スキルを習得したり、上流工程やデザインなどエンジニアリング以外の領域にも役割を広げる。
- スペシャリスト:より多くのプロジェクトに参加し、得意分野を多角的に深めていく。
ここで大事なポイントは、その人の性格や意思を確認してタイプを把握した上で、異なるタイプを強要しないことです。 例えばスペシャリスト気質のある人に、チームにリーダーがいないからといってリーダータイプのスキルを伸ばすことを強要すると大抵失敗します。 その場合はリーダータイプのエンジニアを連れてくるか、いない場合はエンジニア以外のリーダータイプの人(プロジェクトマネージャーなど)をチームに入れるなどした方が良いと思います。
チーム構成と適切なバランス
どのタイプが良い・悪いということはなく、チーム内の構成バランスが重要です。
- 大規模プロジェクト → リーダーを中心にチームを統率し、スキル差のあるメンバーをまとめる。その中に少数のスペシャリストがいると安定感が増す。スムーズな開発進行を実現するために、役割分担を明確にすることがポイントです。
- PoCやスモールチーム → オールラウンダーが1人いることで、コミュニケーションコストを削減し、スピード感を出せる。短期間での意思決定が求められる環境では、特にこの構成が効果的です。
逆に、例えばスペシャリストばかりのチーム では、
- リーダーが不在のため、仕様待ちの受け身になりやすい。
- コミュニケーション不足が生じやすく、プロジェクトの進行が遅くなる。
また、エンジニアの担当領域によって、タイプが偏りやすいと考えています。
- フロントエンドエンジニア は、デザイナーやプロダクトマネージャーとの仕様や挙動の検討が多く、UXの改善やパフォーマンスチューニングにも深く関わることでオールラウンダーになりやすい。
- バックエンドやインフラエンジニア は、特定技術に深く関わることが多く、パフォーマンスの最適化やセキュリティ対策など、専門的な知識が求められることでスペシャリストになりやすい。
この辺りを踏まえて、チームのサイズ x 担当領域 x タイプで構成を考えると良いと考えています。
採用戦略と育成
採用の際もチームのバランスを意識することが重要です。 基本的に、今のプロジェクトチームにどのタイプのメンバーが足りないかを考えた方がよいです。
また、育成の視点で考えるとジュニアメンバーを採用する際はリーダーがいるチームに配置すると成長しやすいです。 一方で、オールラウンダー は1人で動くことが多いため、育成経験が少なく「どう教えるか」が課題になりやすいことが多いと感じます。 スペシャリスト の場合は「背中を見て学べ」という姿勢が多い印象です。
どのタイプの人材が即戦力として採用する必要があるのか、育成人材をどのタイプの人材のもとで育成するかなど、組織全体で考える必要があります。
より上位のメンバーのキャリア形成
上位の役職を目指すエンジニアは、単一のスキルセットにとどまらず、もう一つの軸を意識することが重要です。
例えば、「スペシャリスト + オールラウンダー」の人は、リーダーと組むことで大きな相乗効果を生み出します。リーダーが方向性ややることを明確にし、幅広く深い知識を持つメンバーが具体化していくことで、スピード感をもってプロジェクトを推進できます。また、リーダーがいない場面でも自律的に動き、プロジェクトを前進させる存在として活躍することが可能です。
ちなみに、私自身は「リーダー + オールラウンダー」だと思っています。エンジニア1人でプロジェクトに参画することが多く、プロジェクトの立ち上げや保守運用を1人で担うことが多かったため、自然とオールラウンダーになっていきました。 オールラウンダーは「器用貧乏」でもあるので、マネジメントを見よう見まねで学びながらリーダー軸を伸ばしていきプロダクトマネージャー、VPoEという経歴を辿ってきました。
まとめ
- エンジニアには リーダー / オールラウンダー / スペシャリスト の3つのキャリアタイプがある。
- チームのバランスを意識することで、生産性の高い組織を作ることができる。
- 採用・育成においても、チームに足りない要素を補うことが重要。
- さらなる上位のキャリアを考えるときは、もう1つの軸を意識することで成長の幅が広がる。
組織やチーム構築の議論は答えはないので、参考にでもしてもらえればと思います。また、これからAI全盛期となっていくので、どの部分はAIで補うか、と考えても面白いと思います。