こんにちは、トレタでVPoEを務めている北川です。 この記事はトレタ Advent Calendar 2025の記事です。だいぶ遅刻してしまい、大晦日に執筆しています……。
年末ということもありますので、本記事ではトレタのプロダクト開発部における2025年の取り組みを振り返ってみようと思います。
開発 & リリース
215
リリースノートを見返してみたところ、今年のリリース回数は合計「215回」でした。 1年は約52週ですので、平均すると週に約4回の頻度でリリースを行っていた計算になります。
リリース内容は新機能の追加からバグ修正まで様々ですし、プロダクト自体も多岐にわたるため、この数字が一概に「多い」とは言えないかもしれません。 しかし、今期は開発指針として「大きな機能を一度に出すのではなく、小さくリリースを重ねる」ことを掲げていました。その点では、少しずつでも継続的にユーザーへ価値を提供し続けられた一年だったと感じています。
比較的規模の大きな開発に絞って振り返ると、プレスリリースを出した案件は「トレタ予約台帳」で6件、「モバイルオーダー・トレタO/X」で5件でした。今年は他社システムとの連携など、プロダクトの広がりを強化する開発が多かった印象です。
チーム体制
今年は、開発組織の枠組みを変えることにトライした年でもありました。
マイクロサービスとサイロ化
これまでのトレタの開発文化では、組織図上は「フロントエンドチーム」「バックエンドチーム」といった職能別で構成されていました。しかし実態としては、「モバイルオーダー注文アプリチーム」「決済システムチーム」「POS連携チーム」といった具合に、プロダクトやマイクロサービスごとにチームが分かれて動いていました。
この体制での課題は、一つの機能追加を行う際に1チーム内で完結できず、複数チーム間での連携が必要になることでした。 リリース当初の規模が大きい開発では並列稼働も有効でしたが、比較的小さな機能追加を繰り返すフェーズに入ると、チーム間のコミュニケーションコストや、認識の齟齬による手戻りが無視できなくなってきました。 IF定義書などで対策しても、「値がない時はnullなのか空文字なのか」といった細かい部分でのミスは頻発します。また、各チームが「機能の一部の部品作り」に終始してしまい、全体を通しての振る舞いに対する意識が希薄になる、全体を見通す人に負荷が集中し考慮漏れが起きる、といった問題も発生していました。

目的別チームへの再編
そこで、チームを大きく3つの目的別に再編しました。
価値向上チーム / 体験向上チーム: いわゆるデリバリーチームです。「顧客価値」の提供を目的とし、1チーム内で開発を完結できるよう、プロダクトを横断して開発を行います。
基盤開発チーム: プラットフォームとしての共通部分を開発しつつ、デリバリーチームと連携します。
この体制により、開発ロードマップの項目を各チームに明確に振り分けられるようになり、各チームが仕様検討からリリースまで自走できるようになりました。エンジニアにとっては、よりフルスタックな動きが求められ、上流工程にも関わりやすくなりました。

マトリックス体制への着地
一方で、この体制にも副作用がありました。「プロダクトごとのオーナーシップ」が希薄になったことです。 SLO管理、エラー対応、ライブラリ更新などの保守業務を行うメンバーが明確でなくなり、なし崩し的に「以前担当していたメンバー」が対応せざるを得ない状況になってしまいました。
そのため最終的には、目的別チーム(横串)に加え、プロダクト別チーム(縦串)も改めて設定し、双方向に関わるマトリックスな所属形態に落ち着きました。 現在は、各プロダクトを担当するメンバーが整備やルール作りを行い、形式的にでもレビューに入ることで「プロダクトの秩序」を守る役割を担っています。 結果として、これまで特定のチームに属人化していた知見がオープンになりつつ、他のチームメンバーも手を入れやすいコーディングルールが整備されるという流れが生まれています。

出社回帰
昨年までは完全フルリモートでしたが、今年からは全社的に一部出社の方針となり、開発部では週1回の全体定例日を出社日としています。
出社の目的の一つはコミュニケーションの改善です。前述の通り、開発におけるコミュニケーションコストの削減は積年の課題でした。 フルリモート時代、全員カメラオフで行っていたオンラインミーティングに比べると、対面での打ち合わせは確実に空気感が良くなったと感じます。特に社内の技術発表会(テックトーク)では、以前より確実に発言が増え、活発な意見交換が行われるようになりました。
課題としては、週1回の出社日に予定を詰め込もうとするため、その日がミーティングで埋まりすぎてしまう点でしょうか。 個人的には「合宿」と称して、必要なメンバーで半日ほど会議室に籠もり、設計会を行う動きをたまに行なっています。ホワイトボードを囲んで集中して取り組む時間が、もっとオフィス内で頻繁に行われるようになると良いなと考えています。
AIブーム
開発現場におけるAI利用は、もはや「ブーム」という一過性のものではなく、不可逆な変化となっています。
この1年を振り返ると、ChatGPTが懐かしく感じるほど変化が激しい年でした。最近の社内ではClaude Codeの利用率が最も高く、エディタもCursorが流行していましたが、現在はAntigravityへ移行している場面もあります。 当初は会社制度としてChatGPTのアカウントを付与していましたが、ClaudeやCursorなどツールの入れ替わりが激しく、制度設計が追いつかないほどです。最近は「トークンがすぐ切れるのでClaudeのMaxプランが必須」という声も増えてきました。
社内ではメンバーの発案で「AIテックトーク」という情報交換会も始まりました。隔週30分の開催ですが、新しいモデルやサービスが次々と出てくるためネタが尽きることがありません。コーディングの現場から少し離れている私にとっては、キャッチアップの場として非常に重宝しています。
AIで生産性は上がったのか?
よく議論になる「AIでエンジニアの生産性は上がったのか」という問いに対しては、AIテックトーク内での反応を見る限り「そこまで劇的には上がっていない」というのが正直なところです。 テストコード生成やスペック駆動開発など様々なアプローチが試されていますが、多くの場面において「コーディングにかけていた時間が、AIへの指示や生成物の管理(マネジメント)の時間に置き換わっただけ」というのが、生産性が微増にとどまっている背景のようです。いかにAIを複数並列に動かしていくかが今後の課題になりそうです。
一方で、確実に便利になった場面もあります。 初見のコードを読む際の補助としては非常に有益で、先述した「プロダクトを横断して開発を行う」体制において、既存コードの理解を助ける強力なツールになっています。 また、実装前の高速なプロトタイピングも増えました。プロトタイピングと「Vibe Coding」は相性が良く、デザインやUXの検証・ブラッシュアップを早期に行えるため、手戻りが減り、結果として開発サイクルが早まるケースも出てきています。
さいごに
こうして1年を振り返ってみると、かなり前の出来事のように感じるくらい、密度の濃い開発を行ってきたなと感じます。 無事にこの1年を走り抜けることができたこと、まずはメンバー全員に感謝を伝えたいと思います。
来年はさらに忙しくなりそうで、今はその準備に追われる年の瀬です。 それでは皆様、良いお年を。そして2026年もトレタ開発部をよろしくお願いいたします。
