こんにちは、トレタでVPoEをしている北川です。
先日、開発部で初めての「AIハッカソン」を開催しました。テーマは「AIで業務をアップデートする」。発起人である私が、なぜこのハッカソンを始めたのか、当日どんな雰囲気だったのか、これからどうしていきたいのか、 当日の様子を振り返りながら書き残しておきたいと思います。
なぜAIハッカソンを始めたのか
普段から考えていたのは、「開発部のメンバーには、もっと積極的にAIを使ってほしい」という素朴な思いでした。
トレタでは日々の業務の中でAIを使う場面が確実に増えています。コードを書くとき、ドキュメントをまとめるとき、調査をするとき。ただ、その使いこなしには個人差があります。
すでにヘビーユーズしているメンバーもいます。彼らに話を聞くと、「コーディングはほとんどAIに生成させて、自分はレビューに回るほうが多い」という声がよく出てきます。「こんなこともAIで出来てしまう?」と尋ねてみると、「おそらく可能だと思う」という答えが返ってきます。ただ、そこまで踏み込んで試すには業務時間中の隙間では足りない、というのが正直なところのようでした。それなら、まとまった時間を確保してやってみようと考えました。
一方で、まだあまりAIを業務で使えていないメンバーもいます。彼らにとっては、まずは触ってみる時間と、他のメンバーがどんなふうに使っているかを目の前で見られる時間が必要だと感じていました。
この両者を同じ場に集めたら何が起きるだろうか。そんな思いで、業務時間内に丸一日を確保し、AIに集中する場をつくることにしました。発表のクオリティではなく、「他の人がどう使っているか」を見て、聞いて、自分の業務に持ち帰ってもらうこと。それによってAIの活用がチームに根づき、より積極的に使われていく状態をつくる、それを目的としました。
ハッカソンのルールも、できる限り間口を広くとりました。
- AIを必ず使うこと(ツール・API・モデルは問わない)
- 個人参加でもチーム参加でもよい
- 動くもの(プロダクト)の完成は不要
- アイデア・提案・プロトタイプ・フローの設計でも歓迎
「動くものは作らなくていい」とすることで、参加のハードルを下げました。目に見える成果物が残らなくても、自分が試してみたかったことを試し、それを言語化できれば、十分に意味があると思っています。
当日の様子
オフィスに集まって朝から取り組み、地方在住の一部メンバーはMeetでオンライン参加。普段の仕事の形そのままで、特別な準備は何もしませんでした。

午前のアイスブレイクから始まり、ランチを挟んで午後はひたすらハック。中間チェックの時間を一度入れて、困っている人がいれば共有、というゆるやかな進め方にしました。
夕方からは発表タイム。短い枠で、取り組んだことを話してもらいました。
印象に残った発表
ここからは、特に印象に残った発表をいくつか紹介します。
問い合わせ調査の自動化
サポートからJiraやNotionに不具合疑いの調査依頼が起票され、Sentryなどでログやエラーを調査し、原因の仮説を立てて不具合を修正する。普段の業務で何度も繰り返している、それなりに時間のかかる作業です。
実際にあった調査依頼をモデルケースとして、その内容をAIに渡し人が行うのと同じようにSentryのエラーログやアプリケーションログを確認できる状態を整え、原因まで辿り着いて修正案を出せるようにしていく、そんなアプローチでした。
結果としては、最終的に人と同じ修正案まで辿り着くことができました。今回はNotionに修正案を作成する段階までにとどめましたが、Pull Requestの作成まで踏み込むことも十分に可能だと思われます。
この仕組みはハッカソンの後すぐにでも実業務で使える精度になっており、調査の効率とスピードが格段に上がりそうな感触がありました。次回以降のハッカソンでは、この仕組みを複数のプロジェクトに横展開できるよう、さらに深掘りする回ができないかと考えています。
Playwrightによるブラウザ操作自動化
定期的に繰り返し行っている経費精算の作業を、AIにPlaywrightのコードを書かせてで自動化する、という内容です。
Claude CodeのComputer Useでも同様のことは行えそうですが、決まりきった操作内容であれば、Playwrightで実行するほうが確実で実行速度も速いです。
実はこの発表、エンジニアではなくPMによるものでした。AIが当たり前にコードを書けるようになって、エンジニアでなくてもコーディングを使って自分の業務を改善できるようになってきています。「PMが自分でツールを書く」のは、AIによってできることが広がった象徴的な事例だと思います。
AIによるテストデータの生成
こちらもPMによる発表でした。テストデータの作成・管理にかかっていた負担を、AIを使って大きく減らすという内容です。
複数のパターンの掛け合わせのようなテストデータを作るのは、AIにとって得意分野です。今後新しく条件が増え、掛け合わせのパターンが増えていっても、簡単に対応できることに大きな価値を生んでいます。
その他の発表
紹介しきれませんが、他にも以下のような発表がありました。
- 過去の全コードレビューを取り込んだレビュースキルの開発
- AIを使ったE2Eテストの作成
- Dify を用いたRAGによる店探しツール
- コードレビュー並列化スキルの開発
それぞれが「自分の業務をどう変えたいか」という起点から出ていて、AIの使い方も多様でした。
やってみてわかったこと
一日終えて、いくつか気づいたことがあります。
それなりのものができる
率直なところ、数時間でもそれなりのアウトプットが出るものだな、と感じました。「動くもの(プロダクト)の完成は不要」というルールは、結果として杞憂でした。
ひと昔前なら、新しいツールや機能を試して試行錯誤しただけで終わってしまうような場面で、それなりの成果物を全員がつくれたというのは、AIならではだと感じました。
全員が一通りAIを使う機会を設けたことで、全体の基礎レベルも一段上がった気がします。「どこで詰まったか」「どういうプロンプトを書いたか」が共有され、知識レベルが揃っていくことで、相互の情報共有は今後さらに活発になっていくと思います。
人それぞれのアプローチ
人それぞれでアプローチの方法は多岐にわたり、それによってアウトプットの精度にも差が出てくることがよくわかりました。
調査依頼のスキルについては、「ソースコードやログなど必要な情報と使い方を教えればできるだろう」という漠然とした期待を持っていました。ただ、今回の発表で高い精度が出たのは、正解の原因がわかっている状態からスタートし、そこに辿り着くための方法を反復・改善するアプローチを取ったからこそだと思います。
ほかにも、プロンプトを工夫するという手段よりもコードを書かせるほうが揺れが少なく、冪等な処理には向いているということが、Playwrightによる自動化の発表からよくわかりました。
エンジニアでなくてもコーディングを使った成果が出せる
ハッカソン全体を通じて、PMから続けて技術的な発表が出てきたこと。これが、私にとって今回のハッカソンで一番印象的な出来事だったかもしれません。
簡易なスクリプトやツールが、コーディングスキルがなくてもすぐに作れてしまう、ここにAIの大きなインパクトを感じました。AIが書いてくれるからこそ、自分の業務改善を自分でできる。職種の壁が薄くなっていく手応えを、はっきりと感じた一日でした。
これからも続けていきます
このハッカソン、今後も定期的に開催していくつもりです。
「やってよかった」で終わらせず、続けていくことで、AI活用が文化として根づくスピードを上げていけると考えています。次回は調査依頼の自動化をさらに深掘りする回をチームでやれないかと、構想を練っているところです。
最後に

ハッカソンといえば最後は打ち上げ、ということでしっかり肉を食べて英気を養いました。
トレタでは一緒に働く仲間を募集しています。



