トレタ CTOの増井です。
トレタは創業して3年半、エンジニアも2名から13名に増え、私の役割も変わってきました。
当初は一人目のエンジニアとしてアプリの設計やサーバサイドのコードを書いたり運用全般を行っていました。
人数も増え、2年を過ぎたあたりからエンジニアリングの中で私が率先してやる必要のあることがほぼなくなってきました。むしろ海外展開で出張が増え、連続した時間がとれずに進捗を遅らせる原因になってしまうこともありました。
最近の論調では、メンバーが増えるとCTOはマネージメントや組織作りに移行して行くみたいですが、私はそっちに興味が全然なく、向いているとも思えませんでした。そもそも私は上司を持ったこともないし、決められた環境の中で働くのがとても苦手なので。
私が「組織を作って管理して行く」のは無理というのはトレタ設立当初から分かっていたことなので、メンバーを増やす時は「自分で目標を作って管理していける人」を基準に採用していました。そのため、多くの人がプレイングマネージャとして動け、開発部にはマネージャ職がないまま3年間進んできました。 しかし、人数が増えると人を管理するためでなく、他部署への窓口となる人や、担当のいない仕事を拾いタスクにしてメンバーに割り振る人が、必要になってきました。そこで「エンジニアリングマネージャ」として、昨年4月に入社した酒井がプレイングマネージャとして、その辺の面倒を観てくれるようになりました。
さて、そうなると、私が関わらなくても開発は順調に行われていきます。特にトレタ本体では開発フローが出来上がっており、連続した時間を取りにくくなった私が下手に関わると開発サイクルの歪めてしまうことになります。
2017年は「組織と異なる視点からの問題解決」を行動指針に
そんな感じで、シンガポール立ち上げも落ち着いた2016年半ばから「自分はCTOとして何をして会社に貢献するべきか」という事をずっと考えてきました。
CTOとしていろんなイベントに呼ばれる時には他社のCTOに話を聞いたり、IVS CTOのアンカンファレンスでは「マネージメントしないCTO 〜 We are NOT Naoya.」という枠をもらって色々なCTOと話し合ったりしました。
先行事例として、海外のCTOはどうなのかな?と聞いたら、AWS CTOのWernerさんのブログを教えてもらいました。 10年前ですが「The Different CTO Roles」 という記事の中では「CTOとは何をする人なのか」という話から、その役割として4種類に分類されていました。
- Infrastructure Manager
- Technology Visionary and Operations Manager
- External Facing Technologist
- Big Thinker
前の二つはエンジニア組織を直接管理する方向で、後の二つは会社を新しい方向に導くために他の部署とも連携取りながら影響して行くという風に説明してます。目線がエンジニア組織に向くか、会社(スタートアップの場合は ≒ CEO)に向くかの違いでしょう。
このブログを読むうちに、イベントでよく聞くCTOの役割は前者であり、私が目指すのは後者じゃないかと感じてきました。 特に創業CTOとして、前職なども含め6年間もCEOの中村と一緒に仕事をして来て、私に求められているのも後者としての役割だと感じていました。
「Technology Visionary」は「CTOは技術を引っ張らなければ行けない」という気持ちがありCTOは当然あるべき役割だと思っていましが、この分類では私の目指す方向に入ってこないことは、割と衝撃的でした。
この記事や関連記事を読み、「エンジニアの先頭に立ち、引っ張って行くより、一人突っ走って『こういう道があるんだ』という事を観てもらえる立場」になりたいなと明確に思えるようになったのは11月頃でした。
また、事業や会社の進むべき方向をもっとも理解しているべき創業者の一人として、事業や会社の課題をチームとは違う角度で解決を模索するという事も「やっていいんだ」と思えるようになってきました。 これをやると開発チームとは距離ができてしまう可能性もあり、「開発部 CTO」として正しい道なのかずっと気になっていました。
そこから自分の役割をまとめて2017年のJob descriptionを下記のように書いてみました。
開発部の一部としてのCTOと、事業を包括的に見る共同創業者の立場で分けて考えてみました。 「組織と別の視点から問題を解決する」というのが2017年の行動の大枠になります。 # 開発部 CTO職 技術とビジネス、両軸のバランスを保ちながらトレタを伸ばす役割。 ## 事業の技術判断 - 事業が生まれるところに技術視点を持ち込む - 各プロジェクトの利用技術・アーキテクチャと問題の把握 - 各プロジェクトの目的や事業意義を把握し、メンバーのサポートを行う ## 技術広報 - トレタの中で起こってる技術を外に伝えて、技術力をトレタのブランド力向上に繋げる - 各プロジェクトの利用技術・アーキテクチャと利点・欠点・の把握 - トレタの開発文化を明文化して内外に発信、定着させて行く ## 採用 - 会社説明と面接 - 採用広報 ## メンタリング - 必要に応じて1 on 1などを行う ## アーキテクト - 基本設計の部分でデータ構造や全体の構成などのレビューを行う ## 隙間 - ハードなど、誰も持たない技術に関する案件 # 共同創業者職 トレタの創業者として、既存の関係性やビジネスに囚われずにトレタを伸ばす役割。 ## 組織横断の問題解決 - 営業やマーケなど開発部以外でもエンジニアや共同創業者の視点からできる問題解決を提起する - 特に海外展開を考慮した問題解決を行う ## TORETA LAB - 非連続にトレタを成長させる種を見つける - 技術を主とした新規事業開発 - プロダクト本流外を技術で解決するプロダクト - どっかで学生バイトかインターン入れたいなぁ
去年の秋ぐらいから、上に書いたようなことを意識しながら仕事をしてきました。
もうトレタ本体の開発で日常的に私が関わる部分はなくなりました。新しい機能開発や技術剪定もほぼ全てを開発組織で行なっています。私がいなくてもトレタの開発に困ることはほとんどないでしょう。だからこそ、開発チームから少し離れた、別の視点を持ち込むことで、プロダクトが非連続に成長させていきたいと考えています。
また、チームの人数も増え、層も厚くなったことで開発チームの中からも新しい方向性が出てくるようになりました。
トレタでは3年以上運用して蓄積したお客様のデータを元に、お客様の利益になるデータをまとめて提供して行くためにデータ解析を本格的に始めたところなのですが、数学的な分野は私の苦手なところであり全然手の出てない部分でした。 そこは、エンジニアの芹沢と中村(若い方)を中心に企画・開発してガシガシと出来上がって行く様子を見て、新しく面白いものが出来上がって行くのをワクワクして見ています。
トレタの新しい可能性を見つけるための「TORETA LAB.」を開設
私は今年、アプリ内に面白い機能を入れるSDKを作ったり、新しいハードを作っていたり、営業部の業務フロー改善のお手伝いなど、本体の開発以外だけど「技術で解決」できる問題を探し回っています。会社としてのトレタの引き出しを増やして深みのある会社にしたいのです。その引き出しを作るための「TORETA LAB.」という一人組織的なものを作りました。
「創業CTO」というのは何をやっていても、後から入ったメンバーとしては口の出しにくいものでしょう。しかし文句も言いにくいため、その人の能力が組織の能力の上限になってしまう事も十分に考えられます。しかし、その「口の出しにくさ」をいい方向に生かして、新しいトレタの可能性を作って行く2017年を目指しています。
そして、こんな組織で一緒に働いてくれるエンジニアを募集しています。トレタの技術や組織に共感を持ってくれて「自分はこんな役割で働きたい」と思ってくれる、「こんな役割があるんじゃないか」と考えてくれる人が一緒に働いてくれると非常に嬉しいです。
また、TORETA LAB.では学生のインターン生も採って見たいなーと思っています。何も決まっていないのですがエンジニアリングの好きな学生さんがいましたら、 masuidrive@toreta.in まで気軽にメールいただけると嬉しいです。