こんにちは、トレタ VPoEの北川です。
先月にモバイルオーダー「トレタO/X」の新機能として、NECモバイルPOS連携をリリースしました。今回の記事ではその時の開発を振り返り、開発の裏側について紹介しようと思います。
外部POSとの連携
モバイルオーダーと切っても切れない関係にあるのが「POSレジ」です。POSレジとはいわゆる会計のレジのことです。
トレタO/Xではモバイルオーダー上から会計ができるオンライン決済と、内製のモバイルPOSであるO/X-POSでの対面決済が行えるようになっています。 とはいえ、多くの飲食店には既にPOSレジが入っているケースが大半で、キャッシュドロワー付きの筐体を導入している場合は多額の初期費用をかけているため、原価償却もありPOSレジを入れ替えるという判断はとても難しいです。
そのためトレタO/Xの導入を検討していただいている飲食店様からは、既に利用しているPOSレジと連携してくれないか、という声をたくさんいただいておりました。 そこで外部POSとの連携開発を行い、第1弾としてNECモバイルPOSとの連携のリリースに至ったわけです。
データ連携のアプローチ
POSレジではお会計をするものなので、伝票データを持っています。伝票データは請求金額だけではなくもちろん注文内容も含んでおり、注文を入れるための商品マスター情報をPOSレジは持っています。 つまり、モバイルオーダーとしてPOSレジと連携するということは、データのマスター情報を外部POSレジ側に委ねることを意味します。 そこで、トレタO/XとPOSレジ間での連携のアプローチは2つ考えられます。
1.モバイルオーダーで受けた注文データ等を随時POS側に送る
このアプローチは既存のシステムの構成を保ったまま、連携部分を追加しやすいというメリットがありますが、デメリットはやはり分散トランザクションとなってしまう点です。注文データなのでデータロスやタイムラグは業務要件においてクリティカルな問題となり許容できるものではありません。
2.モバイルオーダー側は注文データ等を保持せず、POSレジ側のAPIにに注文を送る
1のアプローチが非機能要件的に難しかったため、今回はこちらの方式を取りました。店舗が利用しているPOSが内製のOX-POSか、外部POSかで注文の送り先を切り分ます。
マイクロサービスの差し替え
2のアプローチをとると、トレタO/Xのアーキテクチャは以下の図のようになります。緑の部分がもともとのトレタO/Xのマイクロサービス群です。内製POSを使う場合と外部POSを使う場合で利用するマイクロサービス群は大きく分かれます。 共通で利用するのはモバイルオーダーに表示するためのメニュー管理システムと、管理システム用のアカウントの認証・認可システムです。 そして、外部POSを利用する場合は注文システムやオンライン決済システムなど今までコアなデータを扱っていたシステム群は切り離されます。
これほどダイナミックなマイクロサービスの繋ぎ合わせはマイクロサービスで当初設計した時には想定していませんでしたが、実際にこれが行えたのはマイクロサービスである利点かと思っています。ドメインごとに疎結合にしていたおかげで、必要なシステムだけを取捨選択することができています。
実際に、外部POS連携を企画してからこの形に設計し、実装は約3ヶ月で行うことができました。修正箇所がほぼフロントエンド側だけで済んだ点が大きいです。
ここでとつぜんPRですが、フロントエンド内でいかに分岐してそれぞれのパターンと整合性をとったか、という話は来週行われるTORETA TECH UPDATE のイベントでテックリードを務めた奥野さんから詳細に語っていただきます!
この先の発展
今回はNECモバイルPOS連携の初回リリースを目指したので、もちろん行き届いていない課題点はいくつかあります。 特に商品マスターがトレタO/X用のメニュー管理システム内と、外部POSシステムが持っている商品マスターで二重管理となってしまっています。
トレタO/Xのコンセプトは商品の魅力を最大限に表現して注文体験を向上させることを大きな価値としているため、POSレジ側が持っている商品マスターのデータ構造だけでは足りずに多くの付加情報を持たせられる必要があります。そのため商品マスターをどちらかのみにすることは難しいため、それぞれのマスターデータをいかにスムーズに同期させるかが次の課題となっています。
また、外部POS連携第1弾と前段で書いた通り、他の外部POSとも今後積極的に繋げていく予定です。これをやるにはフロントエンド側で切り替えしていくには限界がくるため、POS連携用のシステムが必要になってきます。各POSレジが提供しているAPIやデータ構造をいかに抽象化していくか、こちらも次の大きな挑戦です。
次のプレスリリースが出せたタイミングで、また振り返って開発の内部を紹介をしようと思いますので、乞うご期待ください。